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……何でか終盤だけ切れてます。そうですコピペミスでした。
最後のシーンだけ上手くいかず数パターン別ブロックに書いてそのまま。
そんなわけでちょろっと付け足された完全版でございます。
一応検索避けに某ぽぴもん周りの名前は一部伏字な感じで。
世は戦国、動乱の時代。野は焼かれ、山には死臭が満ち、川は真っ赤に染まった。
荒れた城下を眺め、男は強く歯を食い縛った。東に美しき国ありと言われた領土が蝕まれていく様を、これ以上見てはいられなかった。
城の外は既に無数の黒い旗で埋め尽くされている。圧倒的なまでの物量を前にして、男はぶるりと大きく震える。この戦いこそ、自分の命を燃やす場に相応しい。
右手に刀を、左手に筒を、その身に真っ赤な鎧を纏い、顔に悪鬼の笑みを浮かべ──
勇猛果敢に飛び出した武者は、城の外に並べられた地雷によって吹き飛んだ。
* * *
「だから城の周りに地雷置くなっつってんだろメー!(;巴`;@」
「……一個ずつ踏んで、城に戻って回復したらいいじゃないですか」
「一歩ずつしか動けんのにそんなまだるっこしいことやってられっかメー!(;巴´;@」
丸々とした羊が手にしていた携帯ゲーム機を地面に叩きつける。もう一台のゲーム機と繋がっていたケーブルが抜け、そこで戦国の世に平和が訪れた。
羊の対戦相手であった栗色髪の少女は小さく溜息を零し、自分のゲーム機の電源を切る。
「……うー」
「アドバンスは引っ込んでいてください」
「互換性あるんだから一緒に遊んであげるッスよ! 仲間外れ良くないッス!」
白い髪の少女が小さく唸る。先の二台とは違った形状のゲーム機を手にしていた。羊の代わりに対戦相手をと頼みたい様子だったが、もう一方の少女に呆気無く断られてしまう。
傍で両者の遣り取りを見ていた、石柱に犬の顔を持つ妖怪が憤慨するものの、その憤りが栗色髪の少女に届くことも無かった。軽く肩を竦め、素知らぬ顔で受け流されてしまう。その態度を見た電柱犬は諦め顔で耳を伏せた。
「全く、しょうがないッスね。六号、電柱とモンスター交換するッス」
「……あれがいい」
「国盗り物語は難しいッスよ。ほら、六号が欲しがってたニョ**ゾ捕まえてきたッスから」
羊が地面に叩き付けたゲーム機を、石膏を連想させそうな白い指が指し示す。
穏やかに言い聞かせようとする声を受けても、一見して血の気が失せているような肌色の顔を顰め、嫌だと左右に首を振る。しばらく交渉は続いたが、結局最後まで六号と呼ばれる少女が折れることはなかった。
【三人称ってどうやって書くんだっけ】
僅かに雲が出始めた空の下、切り立った崖の縁に爪先を揃えて立つ。眼下、眩暈のするような距離の果てに、鬱蒼とした森が広がっていた。時折吹く春風に樹木の頂が波打つ様は、無数の何かが手招きをしているようにも見えた。ふと気を抜くと、そのまま虚空へと足を踏み出してしまいそうな、得体の知れない引力を感じる。
嫌な景色だ。そう心の内で呟き、一度堅く瞼を結ぶ。
「……あ、やっぱさっきのオ**リザル返してもらえないッスかね」
背後から電柱に声を掛けられて、静かに目を開いた。首を傾ぐようにして振り返り、これ見よがしに呆れた調子で溜息を吐いてみせた。電柱はその態度に再び耳を垂れ、もしゃもしゃと口周りの体毛を肉球で撫で回す。
「正直、電柱は賛成しないッスよ」
「私が貴方の判断を仰いで物事を決めたことがありましたか?」
「ないッスね。酷い話ッスよ」
先程ゲームに破れた羊は岩場の陰で丸くなり、六号と呼ばれた少女は地面に生えている草を一本一本抜いて回る作業の内にどこかへと行ってしまっていた。この場に残っているのは電柱犬と、栗色の長い髪を三つ編みにしている少女──ミアンだけだった。
両者が視線を向ける先、崖下の森を越えた所には緩やかに傾斜した平原が見えていた。
そろそろか。手首に巻いた時計で時刻を確認したミアンは、崖縁から数歩後ずさって距離を取る。
傍らには彼女の背丈と比べ、半分程度の高さの岩が二つ並んでいた。崖を挟んで岩の後ろに膝をつき、その上に左腕を乗せる。
「前々から思ってたんスけど」
「……何ですか」
「それ、どうなってるんスかね」
「……さぁ」
電柱犬がそれと示したのは、ミアンの左腕に装着されていた鈍色の篭手だった。問われた本人が首を傾げている合間にも軋むような音を立てて、徐々に姿を変えていく。ひび割れ、そこから開き、伸び、あっという間に元の質量を遥かに凌駕していく。
ほんの十秒程度前までは篭手だった物体が、奇怪な銃砲へと姿を変える。鈍色の体はそのまま、所々に走るひび割れの奥に血脈のようなものが見て取れた。
「部下は助けたのに、上司のおともはやっつけちゃうんスか」
骨を圧し折りそうな物体を左腕に乗せていても表情を変えないミアン、その隣に並び、電柱犬は双眼鏡を覗き込む。レンズを通して近くに迫った平原を、頭に角を生やした子供が飛んでいた。
ミアンも銃砲に備えられたスコープを覗き込み、その姿を確認する。
「自分にとって有益か害悪かの違いです」
「とても害には見えないッスけどね」
「……無害な子供を殺して楽しむ程、物好きでもありませんよ」
そこで会話を打ち切り、視覚と指先に意識を集中する。銃身が小刻みに震え、空気を鳴らす。ひび割れの中で血流が筒先へと加速して流れていく。
「……それじゃあ、部下の兎っ子は有益なんスか」
「どうなんでしょうね」
スコープの中心に角を持った子供を捉える。体が芯から冷えていくように感じられた。頭の中が澄み渡り、余計な思考の一切が省かれる。静かに一呼吸を置き、銃身の右側面から伸びたレバーを握り込んだ。
──視界の外から飛び出してきた何かが角の子供を取り押さえた。
直後に血飛沫が上がる。襲撃者の背が邪魔で確認出来ないが、どうやら首を裂いたらしいと判断出来た。
「……どういうことですか」
「電柱に聞かれても困るッスよ」
互いに顔を見合わせ、両者共に我が目を疑っていた。もう一度スコープと双眼鏡をそれぞれに覗き込み、その姿を確認する。……死神か。記憶を掘り起こし、謎の襲撃者を認識する。何のつもりかは知らないが、こちらの手を汚さずに済めば、それに越したことはない。ミアンがそんなことを考えた直後、再び両者は顔を見合わせることとなる。
視界にもう一つの影が飛び込んできた。真っ白な髪に真っ白な肌、真っ白な服の裾を靡かせる姿に、一人と一匹は同時に言葉を無くす。
「何やってんスか六号!?」
真っ先に驚嘆の声を上げたのは電柱だった。続いてミアンが苛立たしそうに歯噛みする。
まさか身内から邪魔が入るとは思わなかった。念を入れて再びレバーを握る指先に力を篭める。こういうとき、嫌な予測は大抵当たってしまうものだ。単純に運が悪いだけなのかは知らないが、それまでの経験から判断して照準を合わせる。
そして今日も慣例通りの結果が導かれた。大人しくしていてくれ。スコープを通した祈りは六号と呼ばれる少女に届かず、白い体が死神に向けて突進した。
「あの馬鹿……ッ」
苛立ちを声にして吐き捨てる。死神の拘束から逃れた子供が、致命傷を負っただろうにも関わらず元気に動き出した。常識を元に行動した自分と、不要な正義感を発揮した六号を恨みながら、ミアンは飛び去ろうとする子供を追い掛けた。
猶予は数瞬、機会は一瞬だった。視界の中で忙しく過ぎる風景を意識の外に捨て、羽ばたく背だけを網膜に焼き付ける。追跡から行動までが一秒弱、視界の悪い場所に逃げ込まれてしまう前にレバーを引き込んだ。
チリ──と空気を焼く音が聞こえる。その音は最初の一つから波紋を広げるように連鎖し、やがて鳥の囀りのように連なっていく。筒先と子供の背とを直線に繋いだ進路上の空気が揺らぎ、細い糸のような光が導線を築いていく。
──遅い。
数秒と掛からない発射までの時間が永遠にように感じられた。直後、轟音を伴って赤い光が大気を貫いた。進行の過程で周囲の空気を巻き添えに焼き尽くし、真っ直ぐに子供の背へと伸びていく。
確実に獲物を捕らえていた光線の先が、立ち並ぶ桜の一本に吸い込まれていく。幹の中程を消し飛ばし、そのまま直線に地面を抉っていった。
「外した……ッスね」
事の始終を見守っていた電柱が脱力した声を洩らす。命中の直前に飛んできた六号と、彼女と衝突し吹き飛ばされた子供の安否を確認し、ゆっくりと双眼鏡を下ろした。
スコープから顔を上げたミアンは眉間に深く皺を刻み、遠くの地面に転がっている六号をにらみつけている。
「どうするんスか」
「……退きましょう」
「六号はどうするッスか!」
「知りません」
今の攻撃で自分達の位置も知られてしまったに違いない。こちらに視線を向けながら、どこかへ連絡する死神の姿を見て確信する。一匹でも厄介なものが、これ以上増えられては対処のしようがない。
銃砲を元の篭手に戻して立ち上がる。六号が気に掛かる様子の電柱が後に続く。撤退の途中で丸まっていた羊を蹴り飛ばし、斜面を駆け下りていった。